ツクヨミしろくま堂書店blog

こんにちは、ツクヨミしろくま堂書店です。お気に入りの本の紹介を中心にブログを書いています。時々、本とは関係ないことも書いています。

明日の子供たち

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「明日の子供たち」有川浩 幻冬舎

 

数ページ読んでみて……。

 
「あー、かわいそうな子ども達のお涙頂戴ストーリーだ」
 
なんて、思ってしまったのでそれ以上読むのをやめてしまいました。
 
でも、なんにも読むものがなくなって、読んでみるかな、と思って読み始めて衝撃でした。
 
児童養護施設が舞台。
 
それだけで、読むのをやめてしまった僕は、とんでもない傲慢な考え方の持ち主であることを、この本を読んで発見してしまいました。
 
僕たちは、児童養護施設に関して、なにか色眼鏡のようなものをかけて見ていませんか。
 
親の愛情に飢えた、かわいそうな子ども達が集まる施設だと……。
 
だから、非行だらけで、問題ばかり起こしている。だって、仕方がない、親の愛情に飢えてるんだもの、みたいな。
 
この本を読むと、それら見方ががらっと変わります。
 
よくよく考えてみるとそうなんです。非行だって、問題行動だって、普通の家庭にもあることなんです。同じように施設にだっていい子もたくさんいるんです。だって、普通の子どもだもん。
 
そりゃ、背景に重いものを持っているかもしれない。衣食住が保証されているとはいえ集団生活だから不自由もある。
 
だけど、彼らは一生懸命生きている。親の援助がなくても、自立できるようにがんばっている。それを職員たちは支えている。
 
彼らに必要なのは、「同情」ではなく「(彼らが求める)支援」であるのです。
 
そんなことを気づかせてもらえました。
 
ここでポイントなのは、自分がしたい「支援」ではなく、彼らが求める「支援」です。なにも金銭や物品に限らず、身近なところに大人がいることだって「支援」なのです。
 
有川浩さんは、たぶん、とある施設の子どもから手紙をもらって、この作品を書いたのだということが想像されます。
 
所々に散りばめられた、胸が鳴る有川節も物語を盛り上げます。
 
是非とも読んでみてほしいです。
 

 

明日の子供たち

明日の子供たち