明日の子供たち
数ページ読んでみて……。
「あー、かわいそうな子ども達のお涙頂戴ストーリーだ」
なんて、思ってしまったのでそれ以上読むのをやめてしまいました。
でも、なんにも読むものがなくなって、読んでみるかな、と思って読み始めて衝撃でした。
児童養護施設が舞台。
それだけで、読むのをやめてしまった僕は、とんでもない傲慢な考え方の持ち主であることを、この本を読んで発見してしまいました。
僕たちは、児童養護施設に関して、なにか色眼鏡のようなものをかけて見ていませんか。
親の愛情に飢えた、かわいそうな子ども達が集まる施設だと……。
だから、非行だらけで、問題ばかり起こしている。だって、仕方がない、親の愛情に飢えてるんだもの、みたいな。
この本を読むと、それら見方ががらっと変わります。
よくよく考えてみるとそうなんです。非行だって、問題行動だって、普通の家庭にもあることなんです。同じように施設にだっていい子もたくさんいるんです。だって、普通の子どもだもん。
そりゃ、背景に重いものを持っているかもしれない。衣食住が保証されているとはいえ集団生活だから不自由もある。
だけど、彼らは一生懸命生きている。親の援助がなくても、自立できるようにがんばっている。それを職員たちは支えている。
彼らに必要なのは、「同情」ではなく「(彼らが求める)支援」であるのです。
そんなことを気づかせてもらえました。
ここでポイントなのは、自分がしたい「支援」ではなく、彼らが求める「支援」です。なにも金銭や物品に限らず、身近なところに大人がいることだって「支援」なのです。
有川浩さんは、たぶん、とある施設の子どもから手紙をもらって、この作品を書いたのだということが想像されます。
所々に散りばめられた、胸が鳴る有川節も物語を盛り上げます。
是非とも読んでみてほしいです。