読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ツクヨミしろくま堂書店blog

こんにちは、ツクヨミしろくま堂書店です。お気に入りの本の紹介を中心にブログを書いています。時々、本とは関係ないことも書いています。

明日の子供たち

f:id:moon-polarbearbooks:20170325211343j:plain

「明日の子供たち」有川浩 幻冬舎

 

数ページ読んでみて……。

 
「あー、かわいそうな子ども達のお涙頂戴ストーリーだ」
 
なんて、思ってしまったのでそれ以上読むのをやめてしまいました。
 
でも、なんにも読むものがなくなって、読んでみるかな、と思って読み始めて衝撃でした。
 
児童養護施設が舞台。
 
それだけで、読むのをやめてしまった僕は、とんでもない傲慢な考え方の持ち主であることを、この本を読んで発見してしまいました。
 
僕たちは、児童養護施設に関して、なにか色眼鏡のようなものをかけて見ていませんか。
 
親の愛情に飢えた、かわいそうな子ども達が集まる施設だと……。
 
だから、非行だらけで、問題ばかり起こしている。だって、仕方がない、親の愛情に飢えてるんだもの、みたいな。
 
この本を読むと、それら見方ががらっと変わります。
 
よくよく考えてみるとそうなんです。非行だって、問題行動だって、普通の家庭にもあることなんです。同じように施設にだっていい子もたくさんいるんです。だって、普通の子どもだもん。
 
そりゃ、背景に重いものを持っているかもしれない。衣食住が保証されているとはいえ集団生活だから不自由もある。
 
だけど、彼らは一生懸命生きている。親の援助がなくても、自立できるようにがんばっている。それを職員たちは支えている。
 
彼らに必要なのは、「同情」ではなく「(彼らが求める)支援」であるのです。
 
そんなことを気づかせてもらえました。
 
ここでポイントなのは、自分がしたい「支援」ではなく、彼らが求める「支援」です。なにも金銭や物品に限らず、身近なところに大人がいることだって「支援」なのです。
 
有川浩さんは、たぶん、とある施設の子どもから手紙をもらって、この作品を書いたのだということが想像されます。
 
所々に散りばめられた、胸が鳴る有川節も物語を盛り上げます。
 
是非とも読んでみてほしいです。
 

 

明日の子供たち

明日の子供たち

 

 

京都本屋巡り

f:id:moon-polarbearbooks:20170320214723j:plain

こんにちは、ツクヨミしろくま堂書店 店主の野坂匡樹です。

 
いつも、お読みいただいてありがとうございます。
 
今日は、ぽかぽかお天気の中、京都で書店巡りをいたしました。
 
同行してくれたのは、友人のひろき君です。彼は年間400冊もの本を読破するツワモノです。彼はtwitterで読んだ本の紹介をしています。(「ひろき@読書垢」もしくは @ookami24102 で検索してください)とても簡潔で、読みたくなる紹介文です。僕の大切なブレーンです。
 
さて、今日の書店巡り、1店目は京都市役所の近くにある「三月書房」さんです。
 

f:id:moon-polarbearbooks:20170320220032j:plain

 
噂では、本のセレクションに定評があるようです。
 
確かに、面白い書店さんでした。
 
一見、無造作に並んでいる本もよく見ると、テーマ別に分けられています。特にアナキストの本には興味をそそられました。
 
自由価格本も多数あり、僕はその中から「天主堂」という宝物のような本を見つけ出しました。
 

天主堂―光の建築

 
長崎県を中心に多数存在する、主に明治期に建立されたキリスト教建築を紹介する美しい本です。淡交社さんは京都の出版社。いい本出してます。今日の戦利品です。
 
2店目は「誠光社」さん
 
京都にある個人書店さんではとても有名な書店さんですね。
 

f:id:moon-polarbearbooks:20170320220842j:plain

 
樹のぬくもりを感じる店内は、祝日だからかたくさんのお客さんが入ってます。
 
リトルプレスにとても強みのある書店さんですね。普通の書店ではあまりみかけない本をたくさん置いています。
 
置いてある書籍のラインナップも唸るもの。なんらかの共通のテーマをもった本たちが、派手に自己主張するわけでもなく、まるで「どんなテーマの並びか考えてね」といわんばかりに静かに列を作っています。
 
3店目は「Hedgehog Books and Gallery」さん
 
ここは、本がメインではありませんが、良好な美術系の古書が並んでいます。
2Fのカフェといっしょに楽しみたいですね。(今回はカフェは行きませんでした)
 

f:id:moon-polarbearbooks:20170320221640j:plain

 
ここから天気もいいので、ぼちぼち歩いて銀閣寺近くにある本日4店舗目の「ホホホ座」さんを目指します。なんか途中疲れてしまい、やってきたバスに吸い込まれるように乗ってしまいました。
 
ホホホ座さん、面白い書店さんですね。
 

f:id:moon-polarbearbooks:20170320221715j:plain

 
なんだか異空間に迷い込んだみたでした。なんかサブカル的なものが似合う本屋さんでしたね。三月書房さんや誠光社さんでは、個人出版している人が本を置いてもらう交渉をしている姿が見られました。ここも同じような光景に出会い、リトルプレスに力をいれているんだなぁ、と感じました。
 
2Fには古本屋さんと雑貨コーナーがあり、こちらも興味深いものがありました。
 
実は他にも3店舗ほど行きたいお店があったのですが、ここでダウン……。
 
疲れてしまい、哲学の道近辺のカフェで休憩して、そのまま散策し、南禅寺を経由して蹴上駅から帰途につきました。
 
今日、行けなかった書店は、またの機会に行ってみたいと思います。
 
また、本の紹介しますね。
 
では……。

 

LIFE ON THE REFRIGERATOR DOOR

f:id:moon-polarbearbooks:20170320101656j:plain

"LIFE ON THE REFRIGERATOR DOOR" ALICE KUIPERS / MACMILLAN

 

忘れておりましたが、当「ツクヨミしろくま堂書店」は語学書・洋書に強みを持つ書店です。今回は読みやすい洋書をご用意いたしました。
 
 
冷蔵庫に貼ったメモ。
 
このやりとりだけで、この本は進んでいきます。
 
「牛乳買ってきて」「おこづかいちょうだい」「うさぎの世話を忘れないで」……
 
なにげない、母娘の日常のコミュニケーション。このメモのやりとりは母と娘の二人だけ。これだけで母子家庭であることがわかります。
 
クレアは16才、産婦人科に勤める母と二人暮らし。学校に通うクレアと忙しい母はいつもすれ違い。唯一のコミュニケーション手段は冷蔵庫に貼ったメモ。
 
多感な時期を過ごすクレアは、いつもそばにいない母親に気持ちが伝わらず、反抗的な態度をとることもあります。
 
母親は、わずかな時間でもクレアと話そうとするも、クレアは学校の行事で忙しかったり、友達と遊びに行ったりでなかなかつかまらない。
 
仕方なく、冷蔵庫のメモで、必要事項だけ伝えます。
 
「ママ、Aとったよ」「彼から電話あったわよ」「10ドル置いといて」……
 
ある日、クレアはちょっと心配なメモが冷蔵庫に貼ってあるのを見つけます。
 
「ママ、お医者さんの予約とったの、明日検査に行ってくる……」
 
メモはいつしか、お互いの伝えきれない気持ちを書く手紙のようなやりとりになっていきます。そして、感動的なラストへと続いていくのです。
 
「メモ」と「メモ」の間になにがあったのかは描かれていません、でもメモの中から伺いしる事ができます。どんな事があったのか想像しながら読むのも、この本の醍醐味です。
 
ちなみにこの本は日本語訳が発行されていません。でも、簡単なメモのやりとりだけで書かれているので、きっと読めます。ぜひ、チャレンジしてください。
 

 

Life on the Refrigerator Door

Life on the Refrigerator Door

 

 

 

 

蜜蜂と遠雷

 

f:id:moon-polarbearbooks:20170315100408j:plain

 

 

 

蜜蜂と遠雷恩田陸 著 幻冬舎

 

音楽……。それはとても身近なもの、誰にでも等しく与えられている楽しみ。
 
自然に溢れる音たち、それは真空である宇宙には存在しないけれど、その宇宙にある普遍の法則に従って奏でられる、言葉では説明のできないもの。
 
言葉では説明できないはずの音楽……。だけどこの本は読んでいると、まるで頭の中でピアノが鳴り響いているみたいです。
 
「芳ヶ江国際ピアノコンクール」を舞台に繰り広げられる音楽の神様に愛された4人のコンテスタントたちの、それぞれのピアノを弾く理由、葛藤、必然……。
 
ひとりの無垢な天才少年が、コンテスタントたちの心に風を起こし、それぞれの演奏が響き合い、聴衆の心に、読者の心に「音楽の素晴らしさ」を感じさせてくれます。
 
そして、この本の大きな特徴としての臨場感ー
 
まるで、観客のひとりとして、コンサートホールにいるような、コンテスタントとして大勢の観客を前にして演奏しているような感覚。それは自然のおおらかさと荒々しさだったり、時には異国の地に踏み込んだような経験だったりします。
 
とても長く、本の厚みもあります。でも、読んでいると心地よい音楽にいつまでも身を委ねていたいような気持ちになります。
 
だんだんと最後の頁に近づいていく栞が、とても愛おしく感じる、そんな本です。
 
そして、心地よい裏切りを感じたコンクールの結果。
 
 「世界はこんなにも音楽にみちているー」その言葉が、いつしか、誰の胸にも染み込んでゆくのです。
 
納得の直木賞受賞作品。
 

 

蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷

 

 

とりつくしま

f:id:moon-polarbearbooks:20170313110926j:plain

『とりつくしま』 東直子 著 筑摩書房

 

 

大切な人をなくしてしまった悲しみ……。しかし、死んでしまった「大切な人」にも悲しみはあるのです。
 
死は、まえぶれもなく、突然やってくる人だって、いるわけです。そんな人たちはこの世に残してきた「大切な人」にたくさんの未練があるわけです。
 
あの世とこの世の狭間にあるところに、「とりつくしま係」がいます。
 
この係は、この世にたくさんの未練を残してきた人たちの魂に、チャンスを与えます。それは、モノになって大切な人のそばで過ごす第二の人生。
 
ある人の魂は大切な妻の日記に、ある人の魂は公園のジャングルジムに、またある人は白檀の香りの扇子に……。
 
そして、それぞれのモノの目線から、死んだ魂は「大切な人」の生活を見るのです。
 
そこには、嬉しい現実や、見たくない現実もあります。
 
モノである彼らには、声をかけることさえできません。ただ見守るだけなのです。
 
11の短編からなるお伽話の群れ。
 
ある人はジーンとしたり、ある人は自分と重ねたり、またある人は「自分がモノになるとしたら」なんて想ったりするのです。
 
自分の周りにあるたくさんのモノたち……。ひとつひとつに、もうこの世にはいない、大切な人の魂が宿っているとしたら。
 
なんとか、「お願い、もう一度だけお話しをさせてください」って思います。
 
この本を読んだ後に、「あの人、お空でどうしているのかなぁ」と思い、今会える大切な人が、なんだか頭の片隅を慌ただしく動き始める。そんな感覚を覚えます。
 
 

とりつくしま (ちくま文庫)

怪物はささやく

f:id:moon-polarbearbooks:20170312154056j:plain

『怪物はささやく』パトリック・ネス 著 シヴォーン・ダウト 原案

池田真紀子 訳 あすなろ書房

 

13才の少年、コナー・オマリーは思い病気のお母さんと二人暮らし。学校ではお母さんのことでみんなから特別扱いされて、自然と自分の周りに壁を作ってしまい、孤独感を深めています。悪夢にまでうなされ続けるコナーは、ある夜怪物と出会います。時刻は0時7分ー。

 

怪物はコナーに3つの話を聞かせます。どれも悲しい結末の物語にコナーは納得がいきません。そして、怪物のする3つの話を聞いた後は、次はコナーが4つ目の話を怪物にしなければなりません。

 

実はそれが、コナーが怪物と出会った理由なのです。

 

この物語は不安や恐怖、怒りや破壊で満ちているのに、ラストは癒しに溢れていて、悲しいのにとても美しいのです。

 

大事な人や、想いを寄せるものを失うこと……。

 

その喪失感による心の傷はその人でしか味わえないし、わからないことが多いです。絶対に他人に100%理解してもらうことは不可能でしょう。時にはそこから抜け出られなくなって、何年も何十年も時間が過ぎることがあります。

 

心配してくれている人たちに気遣って、なんとか明るく振舞ったり、そのことを忘れたかのように生きることもできます。しかし、人のことがなんとなく信じられなかったり、心に思ったことが素直に口にできなかったりするのは、そんな喪失感による心の傷が癒えていないからではないでしょうか。コナー少年に気持ちを近づけると、そんな気がします。

 

この物語は、誰もが持っているそんな心の傷に触れて、暴れさせます。

 

人から暖かかくしてもらったり、励ましてもらったりすることで元気になったり、また歩き出すことはできます。でも本当にその傷を癒せるのは、その当人でしかないのです。その傷に、その人自身が向き合い、見つめることがその第一歩であることを感じさせられました。

 

それは、簡単ではなく、勇気が要ることです。

 

そして、そんなひとつひとつの歩みを、ただ一緒に寄りそって歩む。そんなイチイの木の怪物のような人になりたいー。そう、思いました。

怪物はささやく

ブログはじめました

近況

はじめまして。 ツクヨミしろくま堂書店 店主の野坂匡樹です。

 

本に関わる仕事をしております。仕事の内容に関しましては、また、おいおい紹介させていただきます。

 

このブログでは、お気に入りの本の紹介を中心に、様々な身の回りの出来事を書いていきたいなぁ、と思います。

 

どうぞ、よろしくお願いいたします。