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ツクヨミしろくま堂書店blog

こんにちは、ツクヨミしろくま堂書店です。お気に入りの本の紹介を中心にブログを書いています。時々、本とは関係ないことも書いています。

とりつくしま

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『とりつくしま』 東直子 著 筑摩書房

 

 

大切な人をなくしてしまった悲しみ……。しかし、死んでしまった「大切な人」にも悲しみはあるのです。
 
死は、まえぶれもなく、突然やってくる人だって、いるわけです。そんな人たちはこの世に残してきた「大切な人」にたくさんの未練があるわけです。
 
あの世とこの世の狭間にあるところに、「とりつくしま係」がいます。
 
この係は、この世にたくさんの未練を残してきた人たちの魂に、チャンスを与えます。それは、モノになって大切な人のそばで過ごす第二の人生。
 
ある人の魂は大切な妻の日記に、ある人の魂は公園のジャングルジムに、またある人は白檀の香りの扇子に……。
 
そして、それぞれのモノの目線から、死んだ魂は「大切な人」の生活を見るのです。
 
そこには、嬉しい現実や、見たくない現実もあります。
 
モノである彼らには、声をかけることさえできません。ただ見守るだけなのです。
 
11の短編からなるお伽話の群れ。
 
ある人はジーンとしたり、ある人は自分と重ねたり、またある人は「自分がモノになるとしたら」なんて想ったりするのです。
 
自分の周りにあるたくさんのモノたち……。ひとつひとつに、もうこの世にはいない、大切な人の魂が宿っているとしたら。
 
なんとか、「お願い、もう一度だけお話しをさせてください」って思います。
 
この本を読んだ後に、「あの人、お空でどうしているのかなぁ」と思い、今会える大切な人が、なんだか頭の片隅を慌ただしく動き始める。そんな感覚を覚えます。
 
 

とりつくしま (ちくま文庫)